今ではおせち料理と言えばお正月に食べるお祝いの料理を指しますが、その起源は古く、弥生時代に遡るといわれています。おせちとはお節供〔おせちく〕の略で、自然の恵みや収穫に感謝して神様に供えたものを料理して、大漁や豊作を願い、自然の恵みに感謝して食べた「御節供料理」がルーツです。その後、略されて「おせち」と言われるようになりました。年に何回かある節句に中でも正月が最も重要な節句ということから、正月料理に限定していくようになったのですね。
今のように冷蔵庫がなかった時代に起源をもつおせち料理は、保存がきくお料理がほとんどです。日持ちがするという理由以外にも、年神様に静かに過ごしていただくため、台所で騒がしくしないという心配りも含まれていたようです。また、かまどの神様に休んでいただくためや、神聖な火を使うのを慎むためともいわれています。そして、年末年始、多忙な女性が少しでも休めるようにという配慮もあったのでしょう。
おせち料理はめでたいことを重ねるという願いを込めて重箱に詰めます。基本は四段重ねで、上から順に、一の重、二の重、三の重、与の重、と呼びます。四段目のお重を「四の重」と言わないのは「四」が「死」を連想させ縁起が悪いとされているからです。 詰め方や料理の組み合わせは地域や家庭、しきたりなどによって様々ですが、最も代表的な詰め方は以下の通りです。
一の重…黒豆、数の子、ごまめ(田作り)などの祝い肴〔ざかな〕
二の重…伊達巻やきんとんのような甘いもの中心
三の重…魚や海老の焼き物など海の幸
与の重…野菜類の煮物などの山の幸
そして、おせち料理に詰められる料理にはそれぞれちゃんと意味が込められています。
黒豆:一年中「まめ(まじめ)」に働き「まめ(健康的)」に暮らせるようにとの願いが込められています。
数の子:たくさんの卵があるというところから、子孫繁栄の願いが込められています。
田作り:稲の豊作を願う気持ち、五穀豊穣の願いが込められています。
海老:腰が曲がるまで丈夫という長寿の願いが込められ、海老の赤色は魔よけの色とも言われています。
昆布巻き:「よろこぶ」 の語呂合わせから祝いの儀には欠かせない食材です。
きんとん:「金団」と書き、その色から財産、富を得る縁起物とされています。
紅白なます:紅白のおめでたい色は水引を表し、紅白の組み合わせは平和を願う縁起物です。
29日に大掃除をし、30日は餅つきとしめ縄飾り、そして大晦日にはおせち料理作り、正月の準備が整ったところで、コタツに入って家族みんなで紅白を見る・・・高度経済成長以降のサラリーマン家庭は、そんな年末を過ごしたのではないでしょうか。
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(山田卓司氏のジオラマ写真)