今日は29日、今年もいよいよ今日を含めて残すところ3日となりました。昨日の記事で、「正月飾りは28日に設置するのがいい」と書きましたが、お正月に供える鏡餅や、雑煮に入れて食べるお餅などの餅つきも、28日までに済ませるのがいいとされてきました。今日29日に餅をつくと、29=「2重苦」で「2重に苦をつく」となってしまうと忌み嫌われていたからです。ただし、地域によっては、逆に「2『フ』9『ク』」で「福がくる」として、あえて29日につくところもあったそうですが・・・
私が子どもの頃(昭和30年代)は、このイラストのようにどの家でも自宅で、臼と杵を使い家族総出で餅つきをしたものです。どの家もたいてい農家で大家族、広い庭や土間がまだ残っていた、昭和の古き良き時代の話です。
昭和40年代に入ると、高度経済成長とともに核家族化が進み、農家よりもサラリーマン家庭が増え、家族総出の餅つきなどできなくなっていきます。さらに仕事納めが28日となったらそこまでに正月の準備を終えることなど、まず無理でしょう。餅つきの臼と杵は電気式の餅つき器に取って代わられ、それもやがて現在のように「お餅は買ってくるもの」となってしまうのです。
まあ、いずれにせよお正月にお餅はなくてはならないものです。
そもそも餅は、『望』を意味しており、家族みんなが幸せで希望が叶うようにという願いを込めて、神仏にお供えし、おめでたい儀式に用いるのが昔からのしきたりでした。先日来何度も述べているように、元旦には「年神様」(としがみさま)という新年の神様が、1年の幸福をもたらすために各家庭にやってきます。年神様は祖霊神であり、田の神、山の神でもあります。そのため、子孫繁栄や五穀豊穣に深く関わり、人々に健康や幸福を授ける神様として、「正月様」、「歳徳神」(としとくじん)とも呼ばれて大切にされてきました。一連のお正月行事というのは、その年神様を迎え入れてお祝いし、たくさんの幸せを授けてもらうためのものなのです。
そのお迎えした年神様の居場所が「鏡餅」です。鏡餅が丸いのは鏡に由来し、昔の鏡は丸い形をした銅鏡でした。天照大神から授かった三種の神器のひとつであり、伊勢神宮をはじめ、鏡をご神体としている神社はたくさんあります。鏡餅は年神様の居場所ですから、ご神体としての鏡をお餅であらわし、「鏡餅」と呼ばれるようになったのです。大小2段で月と太陽、陰と陽を表していて、円満に年を重ねるという意味も込められているそうです。